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Newsletter vol.36 論語と算盤とSDGs⑨ <ベンジャミン・フランクリン>
豊島 敦 2023年、日本製鉄はUSスチールの買収を発表した。北米市場での競争力強化、世界第3位の粗鋼生産体制の構築を目指す動きだったが、米政府は国家安全保障の観点から合併に慎重な姿勢を示し続けた。「鉄は国家」という言葉に象徴されるように、USスチールは長らく米国資本主義の象徴的存在であり、日本企業による事実上の救済合併には、米国側に感情的な抵抗もあったと見られる。本連載ではこれまで、「日本」資本主義の父であり、1万円札の肖像になった渋沢栄一の『論語と算盤』をテーマとしてきたが、今回は「アメリカ」資本主義の父であり、100ドル紙幣の肖像にもなっているベンジャミン・フランクリンを取り上げたい。 ベンジャミン・フランクリンは1706年、ボストンでイギリス移民の家庭に生まれた。石鹸・ろうそく職人である父の15番目の子で、家庭は決して裕福ではなく、10歳で学校を辞めた後は、兄の印刷所で徒弟として働くことになる。厳しい修業の期間も時間を見つけては読書に没頭し、独学で様々な知識を身に付けた。17歳でボストンを離れ、フィラデルフィアに移住した後、印刷業を起
2025年6月19日


Newsletter vol.35 論語と算盤とSDGs⑧ <大原孫三郎>
豊島 敦 「日本初」の西洋美術館と聞いて思い浮かべるのはどこだろうか。有名なところでは国立西洋美術館、そして大原美術館あたりではないだろうか。実は、国立西洋美術館の設立は意外にも遅く1959年(昭和34年)、大原美術館は西洋美術を専門とする美術館としては日本最古の1930年(昭和5年)の設立である。まだ官営の博物館(東京・奈良・京都)ばかりだった時代に、地方の一実業家・大原孫三郎によって設立された稀有な存在である大原美術館は現在でも質の高いコレクションで知られ、2025年4月には「児島虎次郎記念館」も新たに開館した。 「わしの眼には十年先が見える」と語った孫三郎もまた、報徳思想の影響を受けた経営者であり、紡績業の発展に尽くすと同時に、福祉・教育・医療・文化の分野においても幅広い社会貢献を実現した。今回は、先見性と倫理観をもって数多くの持続可能な事業を築いた大原孫三郎について紹介したい。 大原孫三郎は1880年(明治13年)、岡山県倉敷で呉服業、繰綿問屋、米穀問屋、金融業を営む大地主の家の三男として生まれた。父・孝四郎は婿養子として大原家に入
2025年5月19日


Newsletter vol.34 論語と算盤とSDGs⑦ <伊藤忠兵衛>
豊島 敦 2020年に米国の著名投資家ウォーレン・バフェット氏が、日本の5大総合商社(伊藤忠、丸紅、三菱商事、三井物産、住友商事)の株式を保有していることが明らかになった。バブル崩壊後の「失われた30年」を象徴する存在でもあった総合商社への投資は、意外なニュースとして受け止められた。2025年に入り、トランプ政権による保護主義的政策などから世界経済の不安定化が懸念され、世界の株価は乱高下し、日本の商社株もその影響を受ける中、バフェット氏がさらに商社株を買い増していたことが報じられた。日本の総合商社の将来性を信じ、過小評価されていると判断したのだろう。本稿では、5大商社のうち伊藤忠商事と丸紅の創業者である初代・伊藤忠兵衛に焦点を当てる。伊藤忠兵衛が二宮尊徳の報徳思想に直接触れていたという記録はないが、儒教や仏教に基づく江戸時代以来の道徳観を背景に、勤勉と倹約を旨としながら公益と私益の両立を図るという点で、報徳思想と通じるものがある。二宮尊徳が幼少期の苦難を乗り越えて立身出世を遂げたことは明治期には広く知られており、忠兵衛がその思想に共鳴していた可
2025年4月19日
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