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Newsletter vol.26 社長が博士課程の学生になると何が起こったか⑫ <完>
長沼 恒雄 今回で、私の研究でたどりついた結論とその後についてお話をして本テーマを閉じたい。 私の博士学位論文の題目は「熟練作業者の知識を活用した射出成形の生産性の向上」である。この論文はアスカカンパニーの生産現場から得られた膨大な生産データに基づいてまとめたものである。研究の内容と得られた結論を要約する。 人の知識と生産ログデータを用いて、「成形機の異常検知」と「不良品の外部流出を減少」するための手法の研究を行い、熟練作業者の知識を活用したデータマイニング(1)による生産性の向上を示した。すなわち、熟練作業者の暗黙知とデータマイニングを用いたデータ取得と処理を有効に活用し、ものづくりのさらなる生産性向上と競争力の強化ついての将来性を示すものである。プラスチック業界だけでなく、多種多様な生産現場で活用されると、生産プロセスへの理解と技術の伝承が進み、日本のものづくりの生産性向上と競争力強化が期待できる。 研究で実装した事例は数多くあるので、興味のある方はアスカカンパニーのホームページやセミナーなどを参考にしていただきたい。...
2024年9月18日
2024年8月18日
Newsletter vol.24 社長が博士課程の学生になると何が起こったか⑩
長沼 恒雄 2016年4月に東北大学大学院情報科学研究科博士後期課程に入学した。入学までの経緯は(5)・(6)に書かせてもらった。社長業もしながら、人生で初めての研究生活が始まった。 取り組んだ内容は「機械の故障予測と不良品発生の原因推定」である。いずれもアスカの工場で生産性向上を阻害している課題を解決するためのものであった。この研究では工場で取得された膨大なログデータを使用した。 研究の詳細はニュースレターの趣旨とは異なるので、どのような環境で研究を進めたのかの話をしたい。私の自宅は本社のある兵庫県加東市、大学は宮城県仙台市にある。アスカには宮城県加美町にも工場があり、以前から毎月3~4日間出張をしていた。この工場は得意先の要請もあり、父が1978年に建設したのがはじまりである。私がアスカに入社して最初に働きだしたのもこの工場である。その後、関東以北の得意先も増え、それに伴い生産能力を拡張してきたが、手狭になった。違う場所に生産拠点が必要になり、県外も含め多面的に立地を検討した結果、同じ町内の工業団地に新工場を建設することにした。新工場建
2024年7月17日
Newsletter vol.23 社長が博士課程の学生になると何が起こったか⑨
長沼 恒雄 今回は弊社の検査カメラがどのように普及したかについてのお話をする。近年の監視、防犯などのカメラに関連する技術の進化はめざましく、我々の日常生活にも欠かせないものになっている。 アスカカンパニーでは、今から20年ほど前に、ヨーグルトのフタの生産ラインで本格的に検査カメラを導入した。この製品はインモールドラベリング成形1を採用しており、ラベルの位置検査は不可欠である。成形品とラベルの位置を計測するカメラが使用された。当時は弊社にはカメラ検査の技術はなく、外部の専門業者にすべて依頼をした。実際に生産を開始すると、外乱光やラベル印刷色などのちょっとした環境変化に対し、カメラや照明の設定条件を変える必要があった。そのたびに生産現場の人が専門業者に問い合わせて指導をしてもらうのだが、カメラの基礎知識がないので、言われるままに調整しても、うまく条件変更ができないことが多かった。このことは現場の生産性を低下させ、作業する人に大きなストレスを与えた。 同じ頃に顧客先Y社が自社生産ラインに最終製品の外観検査用カメラ検査装置を導入した。Y社が弊社のキ
2024年6月19日


Newsletter vol.22 社長が博士課程の学生になると何が起こったか⑧
長沼 恒雄 前号では、私がアスカカンパニーでのデジタル化初期の80年代から今まで取り組んだ管理系の事例について紹介した。今回は機械制御や生産情報システムの取り組み事例を紹介する。 私が入社した1980年頃の成形機や自動機の電気制御はリレーシーケンスが主流だったので、機械の電気回路は配線図を読んだり、制御ボックスの中で配線をしながら学んだ。これは、とても複雑でちょっとした機械の動作を変更するだけでも、物理的に配線をやり替えないといけなかった。ところが、同時期にPLCというデジタルで機械の動作を制御する装置が普及しだした。簡単に言うと、機械の動作をプログラムに書けば良い。動作を変更したければ、プログラムを変更するだけで機械の配線は変更しなくて良い。 1980年代後半にグリコグレープフルーツゼリー(GFD)の容器を開発した。容器の開発コンセプトは「本物のグレープフルーツを半分に割った形にせよ」であった。成形品が2つのパーツで、外カップ(黄色)と内カップ(白色)から成り、超音波で溶着するという容器である。(写真1,2) 写真1 写真2 容器の開発チ
2024年5月17日
2024年4月17日
Newsletter vol.20 社長が博士課程の学生になると何が起こったか⑥
長沼 恒雄 前回は、私の東北大学との出会い、光刺激装置(MiLLS)を共同で開発した話をした。 その後、MiLLSの販促や研究者の要望を聞かせてもらうために、生理学や生命科学分野の学会で企業展示を行なった。この事をきっかけに、大学をはじめとする研究機関の多くの先生方と接する機会が増えた。それまで、私はプラスチック関連のサプライチェーンの中で仕事をしていたので、脳科学関係の研究者の方々との出会いは異次元の世界であり、戸惑うことも多かった。そんな中、2011年9月に愛知県の生理学研究所で開催された学会で、オプトジェネティクスの研究に使われていたロボット顕微鏡の講演を聴く機会を得た。講演されたのは開発者の東北大学の橋本先生で、のちに博士課程で研究指導を受けることになる人である。 そこから、1年ほど経ったある日、橋本先生からロボット顕微鏡にMiLLSを取り付けたいという相談を頂いた。研究内容やMiLLSの仕様などを先生と何度も打ち合わせ、2013年2月にMiLLSを研究室に納入した。その後、フォローアップや追加装置設置などで先生と話をする機会も次第
2024年3月20日


Newsletter vol.18 社長が博士課程の学生になると何が起こったか④
長沼 恒雄 今回は私のビジネススクール(BS)での課題研究(論文)について紹介する。テーマは「小集団活動からの目標管理制度の再構築」、副題“アスカカンパニーの小集団活動制度をヒントに目標管理制度を見直す”である。BSでは、客観的データをもとに先行研究も参考にしながら、結論を導くように指導されていた。私の場合、外部機関に実施してもらった従業員満足度調査のデータを持っていたので、これを活用して課題への論理的展開を考えていたが、これが甘かった。先生から「このアンケート調査結果では、テーマに対して構造化できていないので役に立たない」と簡単に論破され、たたきのめされた。とにかく研究時間に余裕はないので、気持ちを切り替え、全力で構造化したアンケート*1を作成した。このアンケート(質問項目:70問)を、ただちにアスカカンパニーの全社員(当時:156名)を対象に実施した。回答期限も配布後、1週間で回収するように各部門責任者に指示をした。その結果、153名から期限内に回収ができた。読者の皆さんには誤解のないように言っておくが、アンケートについては、自分自身の感じ
2024年1月21日
Newsletter vol.16 社長が博士課程の学生になると何が起こったか②
長沼 恒雄 2014年4月からビジネススクールに通い始めた。記憶だけなのであいまいだが、40~50名くらいの人が一緒に入学したと思う。社会人ばかりなので、職業、年齢は様々であった。仕事をしながら、夜間、休日に学校で勉強するという意識高い系の人ばかりなので、切磋琢磨した。私のような現役の経営者も数名おられた。 先生方はアカデミアと実務家出身の方が半々くらいの構成で、違う視点での講義は面白かった。 講義の内容は経営戦略、組織管理、人材マネジメント、事例研究などのマネジメント系のものが多かった。理論としてこのようなことを学ぶのは初めてで、とても刺激的であった。どの授業でも毎回宿題が出るのだが、その基本的な考えは「あなたの会社ではどうなのか」という実践的な問いに対してレポートを書くことが多かった。私の場合は経営者なので、宿題そのものがアスカでの課題と捉え、レポートをアクションプランとして、アスカでただちに試行した。スクールを修了してから、会社を変えるという「のんびり」したことを言っている場合ではなかった。その結果、リアルタイムで会社がおおいに変化し
2023年11月19日
Newsletter vol.15 社長が博士課程の学生になると何が起こったか①
長沼 恒雄 2023年10月8日に第66回自動制御講演会(東北大学)で特別講演を行う機会を頂いた。この学会は66年間継続している伝統ある集まりでもある。テーマは学会の実行委員長とも相談し、「社長が博士課程の学生になると何が起こったか」に決めて、私自身のことを45分間、お話をさせてもらった。今回はその内容を数回にわけて記事にしてみたい。 私は博士課程に入学する直前の2年間はビジネススクール(以下BS)で経営学全般を学んだ。博士課程での専門はシステム情報科学であり、BSの専門性とは全く異なる分野である。BSでの授業は、平日は仕事終了後の午後6時半頃からはじまり、土、日曜日も開催され、どの授業でも毎回、課題の提出(宿題)が求められる。何十年もいわゆる勉強から離れていた身には、仕事もしながらの授業はハードであった。ところが人間というものは不思議なもので、大変ではあるが、徐々にこの環境に適応するようになる。すなわち、仕事をしながら大学院で勉強をするという習慣が身につく。この2年間があったから、さらに厳しい博士課程に進学し、学ぶことできた。振り返ってみる
2023年10月19日


2023年9月19日


2023年8月18日
Newsletter vol.11 ゴルフ場来訪者のデータ活用
長沼 恒雄 まず,アスカコネクトの所在地の兵庫県加東市の位置について説明する.兵庫県の北播磨地域にあり,人口4万人ほどの地方都市である.アクセスは車が便利で,大阪空港からは中国道を利用すれば40分ほどで来ることができる.電車ではJR大阪駅から山陽本線,途中加古川で乗り換えて1時間40分程度であるが,加古川線は単線で1時間に1本しか電車が走っておらず不便である. 前置きが長くなったが,読者の中には,ゴルファーの方も多いのではと推測する.筆者は加東市民であり,加東市ゴルフ協会の副会長も仰せつかっていることもあり,今月は加東市内のゴルフ場のお話をしたいと思う. 日本のゴルフ場は全国に2,133(令和5年4月)ある.都道府県別では1位の千葉県が157,2位の兵庫県が152である.(1) 兵庫県内の市町村別では三木市25,神戸市24,加東市16か所となっており,県下で3番目である.このような背景もあり,加東市はゴルフ場の支援に力を入れている. 加東市内のゴルフ場は互いがライバルでもありながら,その関係性は良好で,協力して事業も行っている.本稿では長年
2023年6月19日


Newsletter vol.10 『気づき』の大切さ
林 万美子 このニュースレターに目を通して頂いている皆さんは、経営者、社員、フリーランスなど、様々なポジションで労働に従事されていると推察する。皆さんのワークライフにおいて、今日の自分の形成につながった「きっかけ」はいつ訪れただろうか。 「学生時代から何も変わってない」という方は少ないだろう。インパクトの大小はあっても、何かしら気づきや成長を促されるタイミングがあったと思う。上司や同僚からの働きかけかもしれないし、社会人として経験を積み、視野を広げる中で自然に思い至ったことかもしれない。私の場合は、社会人3~4年目の上司に本気で向き合ってもらった事がきっかけで、自己成長できる軌道に乗せてもらえた。幸い皆さんも私もそういった機会に恵まれたが、こういった経験を得た事は、いま風に言えば単に「ガチャ」に当たっただけなのかもしれない。昨今、リスキリングという言葉が巷にあふれているが、男女関わらず「そんなの今更言われても」と感じている、成長や気づきのきっかけ「ガチャ」に外れた人も比較的多くいるのではないだろうか。 現在、20代~30代の若手に向けた社内
2023年5月21日


Newsletter vol.9 成形工場のロボット
長沼恒雄 今回は私が導入を担当した2つのロボットの事例を紹介する 1つ目は,私がアスカカンパニーに入社した1980年代半ばの事例である.世の中ではすでにファナックなどが産業用ロボットを販売し,国内外の工場で活躍していたが,社内にロボットはなかった.当時,私はロボットのある生産ラインは「かっこいい」と思った.それだけの理由で,ロボットが「欲しい」のである.使うあてがないにもかかわらず,無理やり理由を考えて,一番安価(200万円)であった三菱電機製のムーブマスター(写真1)を会社で購入してもらった.置く場所もなかったので,私のデスクの横に置いて,時間があるときに実験的に動かしていた.まわりから見れば,「おもちゃで遊んでいる」と思われていたに違いない.そのうちに自由自在に動かせるようになり,生産現場で実装できそうなアイディアが浮かんだ. 対象の製品は直径8cmほどの化粧品に使われる丸くたいらなキャップで,表面に傷がつくと重大欠陥になる.成形直後(一度に6個成形できる)に取出機により隣のコンベアに置いて,コンベアがいっぱいになれば作業者が箱にいれる
2023年4月20日
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